鉛甘味料うるたこんべ

変なもの愛されないものを主とした本、映画、工作、その他の記録

滑稽で奇っ怪 肉体の門(1988)

吉原炎上」からの流れで「肉体の門」を見た!

肉体の門!女性器を連想させるなんていやらしい響き!パッケージにどう見ても売女のセンス悪そうな服を着た女たちが沢山ひしめき合っていてすこぶる趣味が悪い!こんなもの見るやつがいるのかと思ったので私が見る!

 

調べたところによると「肉体の門」という作品は過去に5回も映画化されてる話なんですって。映画としてはこの1988年の五社英雄verが最後で、そのあとでドラマ化されてるらしい。自分はこの1988年版が初めての「肉体の門」になります。なんだ人気作じゃねぇか。

 

あらすじ!

戦後まもなく、家を焼かれ、家族を亡くし、せんちゃん率いるパンパングループはとある廃墟に身を寄せ合って、体を売りながら生活していたのである。そんな彼女らには夢がある。稼いだ金をこつこつためて廃墟を改修してダンスホールにするんだ!そうなればもう体を売る生活とはおさらばさ。みんなで歌ったり踊ったりして楽しく生きていくんだ。みんなのパラダイスを作るんだよ!

あらすじ終わり!

 

見始めてすぐ思ったんだけど、この映画、映画っていうより演劇っぽいんですよね。台詞回しのあの、一人ずつ順番にしゃべっていく感じとか、無駄に目立つ衣装とか、廃墟のセットの箱っぽさとか。

演劇って廃墟のセットばっかりなイメージがある。たぶん偏見。

 

「肉体の門」って作品は、まず小説の原作があって、それが舞台化&大ヒット!からの映画化という流れできてるものらしいので、舞台版へのリスペクトみたいなのがあるのか知らんけど、まぁこの演劇っぽさっていうのは意識してそういう風にしたものだと思う。

それか「吉原炎上」でも思ったんだけど五社英雄さんって様式美的な見せ方が得意な人って気がして、したら演劇っぽさも様式美を盛るための五社スタイルなのかもしらん。

リアル志向だと痛々しくて言えないセリフってあるしね。

 

そんなこんな方向性で作られた(っぽい)ためか、映画のテイストとしてはなかなか奇っ怪な印象を受ける部分が多々あります。

 

なんというか、色使いが昭和の映画のポスターっぽいなーとか思って、それってどうゆうことなんだと考えたところ、たぶん絵的な調和が取れてないんですよね。これは技術とかセンスに問題があるとかじゃなくてたぶん意図的にそうしてるやつ。むしろ調和がとれちゃうと印象が薄くなっちゃうんじゃないかな。

例えば灰色の廃墟に赤だの青だのといった原色水玉の服を着たねーちゃんたちー、とかね。本気でそれがいいと思ってたの?そのもじゃもじゃヘアーがナウでヤングだったの?と疑問すら抱かせるいろいろが次々に目に飛び込んできて自分としては楽しかったです。それでも映画の中の人たちはいたって真面目だからリアクションに困るのかもしれないけど、素直に笑ってやればいいと思った。

最後の爆発なんかは明らかにウケ狙いじゃないか。

 

深読みすればさ、時代は戦後まもなくでアメリカだのが文化に介入してきて、洋服の着こなしなんかもよくわかってない女の子たちが知恵を振り絞ってああいう格好をしてたのかもしれないんですよ。言っちゃえば猿真似なんでセンスなんてあるわけがないんです。

それを自覚してかしないでか、は、知りませんが、ああやって見栄張って高飛車に振る舞う姿は非常に愛しく思えました。

 

あ、でもストーリーはちょっと詰めすぎだったかも。

そんなフラグあった?とか、いつの間に仲良くなったの?とか、しんちゃん急にキレッキレやな!とか。

破天荒さが楽しくはあるんだけど、それぞれもうちょっと細かく描写してもよかったんじゃ…と思う所もなくはない!

 

総じて!

自分としてはやっぱりこの映画は構図とか色使いが見どころだと思って、昭和の映画のポスターっぽいと思わせるあの感じは、何故か今じゃほとんど見ることができないから(丸尾末広ぐらいじゃないか?)。自分なんかは割とそれだけでも2時間耐えられるくらいだった。

内容的にも、滑稽に生きた女たちを笑ってあげられる人なら楽しめると思う。

「実録!戦後の女たち」とかを求めると、がっかりすると思う。

 

滑稽で奇っ怪な、かつて存在しなかったとは言い切れないファンタジー、戦後日本。ちょいとばかし覗いてみませんか。