鉛甘味料うるたこんべ

変なもの愛されないものを主とした本、映画、工作、その他の記録

普通の一般人はクズなのか シザーハンズ

先日見た、「ファイトクラブ」という映画に、ヘレナ・ボナム=カーターさんっていう女優さんが出ていたのだけれど、なんかえらい禍々しい女優さんだなーと思って見ていたんだけど、この禍々しさ、既視感があるなーと思って、よく思い出してみると「スウィーニートッド」とか「ハリーポッター」にも出て、同じような禍々しさを醸してた人だった。

この感じを出せる人って他に知らないし、好きだなーと思って調べてみると、ティム・バートンの(事実上の)元奥さんらしい。

ティム・バートンの元奥さんマジティムバートンの元奥さん!

と叫びながら、そういえばティム・バートン作品ってあんまり見てないなーと思って、

今回「シザーハンズ」を借りてきたのです。

ヘレナさんは出ていません。

 

 

あらすじ!

昔々のお話です。化粧品の営業で町内を回っていたペグは気まぐれに山の上の城を訪ねてみることにしたのです。誰も寄り付かない山の上の城には青年がたった一人で住んでいました。身寄りがなく、城から出たことのない青年を憐れんだペグは、彼を自分の家に連れていき世話をすることにしたのです。しかし、青年の手はハサミだったので、町内の好奇の視線は避けられないのでした。

あらすじ終わり!

 

物語としては、「フランケンシュタイン」に端を発した人造人間の悲哀、みたいな、まぁ、よくある話です。

が、こんな凡庸な物語でもティム・バートンの脳みそを通すことによってちょっと新鮮に見ることができます。

シザーハンズ」の世界って、何かが狂ってるんですよ。

それは「常識」みたいなものなのか「良識」とかそっち系のやつなのかいまいち捕えられないのだけれど、そのあたりの価値観。

エドワード(シザーハンズ)を見つけるや否や家に連れて帰って保護するペグもそうだし、エドワードとペグの家族の初めての食事シーンでのセリフ、

ペグの息子(エドワードを見て)「こいつ、イカすよ。」

じゃねーよ!怖がれ女子供!

フランケンシュタイン」展開を予見していた私は予想外の「やさしい世界」に動揺を禁じ得なかったのです。その後の、ペグの友人を招いてのバーべキューのシーンでも同様でした。

おっさん「手がハサミなくらいで落ち込んでちゃだめだ」

じゃねーよ!怖がれおっさん!目を血走らせながら農具で威嚇しろ!

 

とは思いつつも、迫害されがちなマイノリティーな人材が人々に受け入れられていくさまは気持ちのいいものでありまして、人を疑ってかかる私でさえ頬を緩ませながらエドワードの行く末を見守ることにしたのです。

 

そんな「やさしい世界」はジムの蛮行によって終わりを告げます。ジムは本当に、創作上ですら稀にみるくらいのクズで、架空のクズでありながらこれほどに憎しみを掻き立てる奴は本当に久しぶりです。

ジムの策略(というかただの自己中?)によって犯罪者予備軍のレッテルを張られたエドワード。

こうなると「やさしい世界」は一気に様相を変え、エドワードを排斥し始めます。

憐れエドワード!そりゃあ手がハサミなもんだからふとした瞬間に人を傷つけてしまうことはあったけれど、それ以外は何も悪いことしてないじゃないか!

エドワードはもうこの町では暮らしていけないので、想い人のキムとも離れ離れになり、元の城へ帰ってまた一人で暮らしていくのでした。

 

 

えー。

こうして振り返り見て「シザーハンズ」は、一般人のクズっぷりが凄い映画でしたね。

うん!キムとエドワードの難しい恋の行方とか全然気にならねぇもん!

 

ジムに関しては、周りの静止を振り切ってまでクズを実行できる、クズ界のプリンスと呼んで差し障りない、まぁ、ある意味いいキャラだった。

 

でも、もっと恐ろしいのはこの映画に出てくる普通の一般人もかなりのクズだってことですよね!

この映画に出てくる一般人って、きっと他人に興味がないんだ。

興味がなくてもエドワードに利用価値があれば利用するし、興味がないからエドワードが自分に害を為す可能性があれば徹底的に排斥できる。

エドワードがどんなやつか、悪いこととかしそうか?とかは考えないんです。

エドワードは悪いやつではない”らしい”。

エドワードは悪いやつ”らしい”。

で判断を下すから、実際に悪いかどうかはどうでもいいんです。

そのくせ実際の処理を自分でやることは避けて、警官とかにやらせようとするから、これはムカつきますよ。

 

ティム・バートンから見た一般人ってこんな感じなのか、それともただ誇張してムカつくようにしただけなのか分かりませんけど、そのあたりが自分的には意味深でした。自分はこんな一般人にはなってはいないだろうか?大丈夫か?と不安になったり、周りの人たちが怖くなったりします。

これを更に掘り下げると例えばイラク戦争の件なんかを考えたりできちゃう感じなんだけど、「シザーハンズ」は昔話式のファンタジーのはずなのでやめます。

 

はい!

 

あぁ、自分はなんてひねくれた野郎なんだろう!いったい自分は「シザーハンズ」に何を見ていたんだ!これはエドワードとキムの恋の行方とかに一喜一憂してればいい映画のはずだろ…。それをこんな感想しか書けなかったよ。

とはいえ、きっとティム・バートンのほうがよっぽどひねくれた野郎に違いないな!