大脱走 は気高く勇敢な齧歯類の戦い
戦争もののコーナーからなんか見ようと思いまして、「大脱走」を見ました。
戦争ものって、ブログをはじめてからも何回か見たことはあったんだけど、暗いやつが多くて、「やっぱり戦争は、やってはいけないと思った。」みたいな人道的な感想しか書けなそうだったから書かなかったんですよね。別につまらなかったわけではないんですけど。
「大脱走」はその辺のバランスが凄くいい感じで、面白い、かっこいい、悲しい、そうだったのか捕虜の世界史、と要はえらくいい映画だったので書くのです。
あらすじ!
時は第二次大戦の真っ只中、ところはドイツ、スタラグ・ルフト北捕虜収容所。集められたのは脱走界の精鋭たち。脱走人数250人にのぼるかつてない規模の脱走計画!いかにしてそれを遂行するのか?!果たして成功の芽はあるのか?!途方もない目標に挑んだ男たちの真実の物語!
あらすじ終わり!
捕虜ってもっとこう、牙を抜かれた獣のように卑屈な様子でシベリアの木の本数を数える仕事をしながら時間と命をすり減らしていく生き物だと思ってたんだけれど、違うんだな。
映画に出てくる脱走のスペシャリストたちは殺されないのをいいことに傲岸不遜な態度を崩さず、脱走することに知恵と体力のすべてを傾ける歴戦の猛者であったのです!
牙を抜かれた獣なんかじゃない!例え戦う力を持たずとも勇敢で気高く、脱走のためならばどんな困難にも立ち向かう!彼らはそう、ハムスター!だったんだ!
割と真面目に言っています。
この映画がこんなにいい映画になったのって登場人物たちを単に、英雄ぅー、とか、戦士ぃー、とかそんなかっこいいものじゃなくて、ハムスターとして見ることができるっていうのが大きいと思うんですよ。
一応書きますけど脱走って凄く勇敢な行為なんですよ。例え収容所から脱走することができたって出た先は敵地の真ん中。祖国まで逃げ延びることなんてなかなかできるものじゃないんです。それでも脱走するっていうのは敵の兵力を少しでも自分に向かせるため=味方に向くはずの兵力を少しでも減らすため!なんです。うん!確かに崇高な行為だ!
でもやってることはハムスターにしか見えねぇ!っていうのが「大脱走」そこらの戦争映画とは一線を画する所以ですよ。
なんせ愉快なんです。
交響詩のようにシーンの雰囲気に合わせて変奏される「大脱走」のマーチをバックに、大の大人たちがチャチな小細工を弄して少しずつ穴を掘っていくんです。(チャチな小細工もバカにできない!)
「掘った土はどこに捨てようか?」
「ズボンの中の袋に入れておいて、裾から捨てて、すぐ足で慣らせばいいんだ!」
「「「すげぇ!」」」
みたいな小賢しいやつの積み重ねが未曾有の大脱走に繋がるんです。端から見てると「そんなんでバレないと思ってんの(笑)」(実際なかなかばれないのだけど)とか思っちゃうような小細工を大勢のおっさんたちが真面目にやってるんですよ。
なんだかすごく愛しいじゃありませんか。
すごくハムスターじゃありませんか。
まさか戦争映画でこんな気持ちになれるなんて。
その他にも、看守の目をかいくぐりながら脱走の準備をするのには、謎の後ろめたさや見つかったらどうしようっていうドキドキがあるし、捕虜がみんなで一致団結して1つのことを成し遂げようとする姿には「ウォーターボーイズ」式の青春ドラマを感じることができる(脱走が俺の生きがいだった、みたいなセリフもあります)。終盤では、かつてあんなにも愉快で勇敢だった奴らにも悲しい結末が待っている。
過酷な状況下にありながら不敵な笑みを浮かべ、例え武器を持たずとも祖国のために勇敢に戦う男たちの物語!
すげぇいい映画でした!
ハムスターに敬礼!