鉛甘味料うるたこんべ

変なもの愛されないものを主とした本、映画、工作、その他の記録

お願いだから救われてください フラテルニテ

clockupのエロゲ、フラテルニテをプレイしましたよー。

euphoriaのメーカーだし、↓このキービジュアルが衝撃的過ぎてずっとやりたかったエロゲです。

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予想通り期待以上に最悪(いい意味で)な物語だったので、感想やその他諸々を書きたいと思います。

 

あらすじ!(公式まま)


強姦された少女は救いを求め、
家族と共に新しい街に移住する。

姉のために移住した街でとある少女に出会い、
仄かな恋の予感を覚えた少年は、怪しげな団体に属する少女と姉を救いたいと願う。

過酷な現実からの救いを求める少女達と、そんな彼女たちを救いたいと願う人々。


同じ救いを目指しながら、
両者の思いはすれ違い、
交わることなく、


救済という名の悲劇を生んでいく

 

あらすじ終わり!以下ネタバレ含みます。

 

OP. Blanky Jet City 「ディズニーランドへ」


Blankey Jet City ディズニーランドへ

(個人的に「友愛クラブ」にハマった人の盲目的な信仰具合は、ディズニー狂いの人のそれ近い気がします。)

 

 

フラテルニテでは、救いを求めて「友愛クラブ」に集ったはずの少年少女が、ヤッたりヤられたり、いろんなものを入れたり出したり、食べたり飲んだりした挙句に、切り取ったり切り取られたり、切り開かれたり、はじけ飛んだりもするので、

「救いなんてない」のキャッチの通り本当に救いのないストーリーであることは間違いないはずなのだけど、、、本当にそうなのかなぁ、と一抹のモヤモヤ感を残すいいエロゲでした。

 

っていうのも、確かに事実だけで言えば、将来ある若者達がオッサン共の慰みものにされて、使うだけ使われた挙句にえげつない方法で死んでいくだけなので、明らかに悲劇なのだけど、当の本人たちは本当に羨ましいくらい最期まで幸せそうで、

実は、「やっぱり救いなんてなかったんや・・・」とか言ってる自分の方が間違っていて、あの子たちはみんなちゃんと救われてたようにも思えるから。

そこのジレンマを、どちらかに偏ることなく、どちらにも説得力を持って描く手腕は流石です。

 

チンポの右左から実の姉と妹にフェラされるシーンがあるんですけど、やってることはあまりにインモラルなのに、姉妹は心の底から楽しんでて幸せなのがすごくよく伝わってくるし、しゃぶられてる側の主人公はそちら側に行けずになんか冷めてるけど、姉妹があんまり楽しそうだからこれも一つの幸福な家庭の姿なのでは?みたいなことを考えてしまったり、幸福が不幸をレイプしてるみたいで好きなシーンです。

 

「アンナカレーニナ」の冒頭でこんなことが言われているそうです。(未読なので文脈はわかりませんが)

「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである。」

フラテルニテだと、

「似たような幸福な家庭もそれぞれに不幸で、それぞれに不幸な家庭も似たように幸福である」

みたいな、何かわかったような何もわかってないような気持ちになって、この中途半端な感じに哲学の余地が残されてる気がして楽しいです。

 

 

好きなヒロインは神村さんと、菱木さんです。(みんなすきだけどね、本当に。)

    菱木さん← →神村さん

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この2人はなんというか、他の人よりも物事の本当のところが見えていて、それゆえに冷めてしまってうまく幸せになれない感じに共感できてつらいです。好き。

園田亡き後で菱木さんが神村さんと一緒に「友愛クラブ」の運営側に回っていたのもそのあたりの感覚が近かったから、神村さんが招き入れたかなぁと。

 

 菱木紗英子

菱木さんは元々はぜーんぜん不幸な境遇なんかではなくて、本来だったらたぶん何不自由なく日々を送っていける娘なんですけど、ちょっとばかり頭がよかったが故に「普通の幸せ」みたいなものが纏っている欺瞞が見えてしまって、そんなんじゃあ満足できなくなってしまった娘ってイメージです。

既知のものでは満足せずに、未知なる高み(あるいはどん底)を、更なる快楽(あるいは苦痛)を求めて、行為をエスカレートさせていく姿は「悪徳の栄え」のジュリエットのようで、めちゃくちゃ汚くてうんこまみれなのに本当に格好いいです。「堕落論」なんかも通じるところがあるかなー。

悪徳の栄え〈上〉 (河出文庫) 堕落論 (角川文庫)

 

バッドエンドは薬漬けになって思考力を失った結果、クラブの他の人と同じような幸福を手に入れて終わってしまったような感じがあるからあまり好みではなかったですけどねー、でも幸せそうだったから別によかったのかなぁ。(死んだのだから良くはないのだけど)やっぱり思考力を手放した方が幸せになれるんだろうか。私的にそれはなんか違うんだけど。

トゥルーエンドは薬に頼ることなく奔放な淫蕩生活を楽しんでいるようでちょっと安心しました。クラブの他の人たちはクラブが崩壊したら自殺してしまうか世間に狂人扱いされた挙句に死んでしまいそうな人たちばかりなので、菱木さんはクラブ崩壊後もどうやってでも生きていけそうで、もしかしたら思考停止でない本当の救いに至ることもできる気がして好きです。続編があったら(絶対ないけど)女王とかになってそう。

 

 神村愛

神村さんは最低な両親のもとに生まれ幼少期から想像を絶する虐待を受け続けてきた不幸すぎる女の子で、大きくなって「友愛クラブ」の黒幕になった娘です。小さい頃の虐待シーンはマジで「やったねたえちゃん」のトラウマが大幅に塗り替えられるレベルなのでかなりきついです。

クラブの運営の方は表面的には「生きるため」にやってたことなんだろうけど、神村さんもクラブの他の人と同じように「救い」を求めていろいろと試行錯誤した結果なんですよね。

神村さんって死ぬギリギリの酷いプレイを幼少期に幼少期にやりつくされてて、同じことをクラブの人に(特に円夏に)やってるって気がします。

それは別に八つ当たりとかではなくて、なぜかそれで救われる人たちがいるから。

自分があんなに苦しくて嫌で仕方なかったのと同じことをされてるのに「救われたー」とか言って嬉々として命さえも投げだすクラブの人たちを見つめながら、そちら側に行く方法や、何か他の選択肢を探しているように見えました。

えー。フラテルニテをやってて思ったんですけど、ある人間のことを完全に自分の思い通りに動かすことができるとき、その相手のことがただの「道具」に見えてしまうんじゃないかなって。神村さんもだけど、女の子たちを嬲りものにして適当に捨てるおっさんたちもそんなところある。

(余談。ウチの会社の社長とか社員をそんな感じで見てるんだろうなー。余談終わり)

クラブの人たちを陥落させることに慣れてしまって、大体の人を自分の思うがままに操ることのできる神村さんにとって、最後まで快楽堕ちすることなく自分のことを「救いたい」と言った白坂君は唯一好意を抱くことのできる人間であり、やっと見つけた新しい選択肢だったんじゃないでしょうか。

不幸のどん底にいた少女が救われるための兆しをやっと見つけることができた。私にはそう見えたし、そうなって欲しかったです。

でもそうはならなかった。

神村さんは、多くの人を不幸にして殺してきた自分は救われてはいけないと言いほぼ自殺に近いような方法で凄惨な死を遂げます。神村さん・・・嫌だ・・・。嫌だ。

 

つらい。本当に救われて欲しかった娘なので本当につらい。

エンディング後のモノローグで

「私を救うと言ってくれて

普通の女の子のように抱いてくれて、

嬉しかった。」

って言ってるけど、知るかよー!これは私のエゴだけど知るかよー!

一瞬だけ救われて満足しないでもっとちゃんと救われてよー!

エロ以外にも楽しいことは沢山あるんだからいろいろ探っていこうよー!

あー・・・。

 

 

ということで、本気で意気消沈できる本当に素晴らしいエロゲでした。

ストーリーの話ばかりしましたけど、こう見えてかなり抜けますし。

私はできるだけ登場人物に没入したいタイプなので、いろいろと試してみたこともあって、フェラシーンで一緒に指をシャブってみたら意外と幸せな気持ちになったり、うんこたべるシーンの後でビーフシチューを食べたら普通に気持ち悪くなったり、たくさん新しい感情を発見することができる最高の作品です。

ありがとう。クロックアップ

f:id:urutakonbe:20170826235610j:plain(オナニー小僧とフラテルニテ)

 

 

ED「仰げば尊し


フラテルニテ OP [ぞんび]