少女を解体する気持ちで 「匣の中の娘」を作ろう
前回の記事で、初めてドールをお迎えしたことについて書きまして、
最近はツイッターとかに上がっているドール写真をちょくちょく見てるんですけど、野外での写真がとても素敵なのが多くて、この娘も外に連れ出したいなーとか思ったんですけど、そのためには何らかのケースが必要になるわけでありまして、今回はドール用の箱でも作ろうって話です。
ゆうてこういうのは既製品を買った方が楽だし、丈夫で便利で格好いいのが手に入るんですけど、ちょっといろいろ思う所がありまして。
(今は狭い世界に暮らしています)
えー、私って、読書の原体験がおそらく「魍魎の匣」なんですよね。
10代の頃に読んで以来、”なんだか酷く、男が羨ましくなってしまった”ままで今に至っていて、 雨宮さんのいる彼岸への憧れがずっと尾を引いているんです。
「ない」モノへの憧れが消えないってのはもう、ほとんど”魍魎に憑りつかれている”ようなもんでございまして、絶対に叶わぬ恋に焦がれるようで、なんとも歯痒いというか、もどかしいというか。
こういうのを放置しておくと、自分の中で理想化された「箱の中の娘」の妄想が、日々を重ねるごとに肥大化していって終には凶行に走る、なんてこともないとは言い切れないのです。
そんなアブナイ妄想を燻ぶらせていた私が今回、完璧と言っていいくらいに美しい娘を手に入れて、しかも移動のための入れ物が必要ということとなれば、これはもう、妄想を成就させる時が来たってやつですよ。
(ウチの娘にはニキビはありません)
私が箱に求める機能は以下の通りです。
・丈夫であること
・美しいこと
・少女を”みっしり”と詰め込むことができる四角い形状であること
・列車の向かいの席でうとうとしてる書生さんに中身を見せやすいこと
っつーわけで、作りましたよー。いえー。
ヒノキで作った木箱にベージュ色の豚革を張っています。(ヒノキである意味は特にありません。ほんのりいい香りがします。あと重いです。)一見エレガントな感じなのだけれど、近づいてよく見ると豚の肌の質感が人の皮を連想させて生々しくていい感じです。
作中の記述では、蓋は上下にスライドする方式で箱の開閉をするみたいなのですが、今回は実用を考えて扉方式にしています。
ドールちゃんをバラして上半身だけで運ぶわけではないので、全身が入る大きさです。今回、既製品の木箱もいろいろ探してみて気付いたんですけど、このアス比の箱って、たぶん棺桶くらいしかないんですよね。だからか変な異様さというか、不吉感がある気がします。
(ほう)
あっ
「聴こえましたか」
うふふ
「誰にも云わないでくださいまし」(パカッ)
(ほう、)
ああ、生きてゐる。
何だか酷く男が羨ましくなつてしまつた。
っていうやり取りがしてみたいなー。あーーー。いいなー。
箱の隙間にはクッションを隙間なくみっしりと詰め込むことでドールちゃんがしっかりと固定されて、ある程度振動が加わっても大丈夫な作りになっています。
胸から上は出すようにしているので、向かい側の相手に見せやすくなっており、あと、まつ毛がつぶれたりするのも防げます。開けた瞬間に倒れこんでこないように腰のところと膝のところを鎖で固定しています。
箱の裏地にはピンクの花柄の布を貼って、エレガントな色使いのなかに、彼岸っぽさや、内臓っぽさが混ざるような感じを目指しました。
(狭くて暗くて息苦しいわ)
箱を作ってみた感想として、当初はこのくらいなら、特に難しいことも考えずにちょいちょいっと出来上がると思ってたんですけど、やってみると意外と考えることが多くて楽しい作業でした。
既製品はないのか?0から作らないとダメ?作るなら材質はどうしようか?どこまで100均で用意できる?組み立ては釘でやればいい?留め金はどういう方式にする?実際組もうとしたら切断面が斜めで上手く組めねぇしよ、まっすぐに切るにはどうしたらいい?
革貼りにしたら格好いいかも?じゃあどんな革がいい?ベージュ?それなら裏地は何色なら合うの?革は切ったらやり直しがきかねぇしよ、うわ切るの緊張する。あと、ドールちゃんの固定はどうしようか?
なんか、この「匣の娘」を作り上げるための試行錯誤が、作中で「匣の娘」に魅せられて何人もの少女を解体して試行錯誤した狂人=久保俊公の思考にシンクロしたように思えて、自分の中に他人の狂気が流れ込んでくるような、なかなかにスリリングな体験でした。彼岸の景色が覗けそうな、この感覚は他ではちょっと味わったことがないです。これが魍魎か。
(うへぇ)
あと、おまけで、私「ステーシーズ」の表紙が大好きなんですけど(内容も大好きです)、これも再現できそうだったんで、やってみました。
ウチの娘と箱が可愛すぎて雰囲気にそぐわないことを除けばなかなかいいんじゃないですか?こうして並べてみると元の表紙の娘は太腿とかムチムチに見えますね。むしろウチの娘が華奢なのかな。
ドールちゃんは愛でるだけでも十分いいのに、他の趣味にも波及していくからとても楽しいですね。いいなー。いいなー。
ED サティ「グノシエンヌ第1番」
(孤独で地道な狂気的作業に)