鉛甘味料うるたこんべ

変なもの愛されないものを主とした本、映画、工作、その他の記録

快楽を飼い慣らすのか、飼い慣らされるのか 「euphoria」

euphoria」フルコンプしましたので、なんか書きますー。いえー。

 

何やらハードめなエロゲの傑作とのことなのでワクワクしながらプレイし始め、私の期待を裏切らないどころか遥か頭上を飛び越えていくすげぇエロゲでした。

私はエロゲ歴2作目の糞にわかなので評価に困りますが、私のゲーム歴、読書歴の中に含めてもかなり上位に入る大好きな作品になりました。

なんというか「家畜人ヤプー」とか「O嬢の物語」とか「ドグラマグラ」の遺伝子を感じたような気がして、凄く嬉しい気持ちになりました。これらの奇書、問題作って、一代限りで途絶えてる(だから貴重)って気がしてたんだけど、私の知らないところで脈々と後継が作り出されているのかもしれないと思うと多幸感に包まれながら眠りにつけます。この糸は弱そうに見えて以外に強靭ですね。

 

↓この並びです!

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あらすじ!

真っ白な部屋に閉じ込められた主人公(恵ちゃん)と5人の少女たち(委員長は含まない)。淡々とした機械音声が凌辱ゲームの始まりを告げる!扉は全部で5枚、1回のゲームをクリアすると扉は1枚開かれる。開錠者(恵ちゃん)は用意された鍵を鍵穴(少女たち)の口・膣・乳・尻といった部位に使用する。 5ターン以内にすべての扉が開かれなければ全員死亡。主人公の選択は?!ゲームの目的とは?!

あらすじ終わり!

 

あらすじとしてはこうなのだけど、どちらかというと部屋から脱出してからの方がメインのストーリーとなるので、「SAW」とか「cube」とかの派生は正直飽きたよという人でも楽しめるかと思います。単に理不尽ゲームものとして見ても、エロゲという媒体の強みを最大限に生かした冷酷無比な内容となっていますので、年齢制限なしの映画とは一線を画すかもしれません。

 

私の攻略順は以下の通り

「凛音様」(澄ました顔しやがって、犯してやる!)

 ↓

「鼻フック先生」(ストーリーにあんまり関わらなそうな女だ!早めに犯してやる!)

 ↓

「梨香ちゃん」(うざい女だ!手酷く犯してやる!)

 ↓

「合歓ちゃん」(敵の本丸だ!犯してやる!)

 ↓

「叶」(かわいい幼馴染だ!犯してやる!)

本当は最初に5ターンで複数人を犯すルートに行ったんだけど、全くストーリーが進まなかったので含めてません。ただ、この時に凛音様の綺麗な顔が苦痛に歪む姿を見たくなったので最初に凛音様を選んだっていうのはあります。

 

出てくるプレイ内容はこんな感じ。

電気椅子、緊縛、鞭打ち、首吊り、フィスト(拳)、ギロチン、鼻フック、筋弛緩剤、下剤、スパンキング、舌攻め、キスイキ、水槽、生配信、うんこする、うんこさせる、おしっこ、チューブ連結循環、食ザー、サンドイッチ、異物出産、犬、人間洗濯機、便女、まだまだ沢山。

読んでるだけで楽しくなる身の毛もよだつような素敵なラインナップです!

ほとんど天才が考えたとしか思えないようなプレイや緊縛方法が沢山あり、なんというか人類の英知というか、人間の業の深さみたいなものを感じます。変態は偉大ですな。

お気に入りは合歓ちゃんとのキスイキのシーンでした(私は割とノーマルなのだ)。このシーンをアイス(ねっとり濃厚なやつ)を舐めながらやるとすごくいい感じです。

キツかったのは、チューブ連結循環、人間洗濯機、便女あたりですね。興味深くはあるのですが、トイレに行って少し考えてみて、やっぱりキツいです。

 

これらのプレイを全力で演じ切る声優さんに敬意を表します。ガチすぎる絶叫、奇声、異音の数々に引き攣った笑いが顔から剥がれませんでした。こういうマジのガチの本気を感じられるの大好きです。

 

 というのがeuphoriaの前半の話で、このゲームが名作たる所以はむしろ後半にあるのですが、後半はゲームの面白さを損なう類のネタバレなしでは語れないので未プレイの方は読まない方がいいです。休憩を挟んで後半について書きます。

 

休憩 特撮 「アベルカイン」

どっちを!選べど!獣のように生きていくだけ!

 

 

 

 

ここから後半です。物語の核心に触れるネタバレを含みます。

 

後半は、叶が黒幕だったこととか、本当は合歓が幼馴染だったんだけど恵ちゃんは記憶を弄られて分からなくなっていたこととか、全ての事情を踏まえた上でトゥルーエンドでの「叶」と「合歓」について書きたいと思います。

 

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まさか叶が黒幕だったとはねー。人間洗濯機とか体張りすぎなおかげでまんまと騙されました。

でもまぁ、「恵ちゃんの肉便器」になってしまった叶よりは黒幕としての白衣の叶さんの方が素敵で欲情します。「恵ちゃんはモルモットなんだよー」と種明かしする時の叶の楽しそうなこと。

全てが演技だったと知ってからだと、地下ゲームの時の叶の言動も別の味わいが出てきます。後に恵ちゃんのことを「最初から最後まで大嫌いだった」と言うその口にどれだけ奉仕され、甘やかされたことか。地下ゲーム中の叶の気持ちを考えるとどこまでも妄想を広げられそうです。

 思うに、叶がやりたかったのはミルグラム実験とかスタンフォード監獄実験みたいなことで、権威や場の空気によって思考を停止し、己をなくす普通の人々のように、恵ちゃんが快楽の虜となって完全に叶の操り人形になるように仕向けてたんです。

叶は基本的に、「人の心なんて簡単に操れる」と思ってる娘なんです。自分は恵ちゃんの奴隷だと言いながら実際のところは恵ちゃんの方を奴隷(または犬)として調教してたんですね。

地下ゲーム終了後の学園で非道の限りを尽くしてたように思えるモブたちを見たときは、「なんだ、モブの方が恵ちゃんより鬼畜じゃないか」と思ったものですけど、あれは、おそらく洗脳されていただけで、モブ共は仮に元の世界に戻ることができて学園内での行いを罪に問われたら、ふてぶてしくも無罪を主張するアイヒマンなんです。

その点恵ちゃんは地下ゲームの時から一貫して、「ルールだからしょうがない」とか「自分も被害者だ」みたいな思考に流されず、「自分は加害者であり、自分の意思で犯したいから犯すのだ」というスタンスを崩さなかったため、叶の思い通りにはならない自分を保つことができたんですね。その辺がモブと恵ちゃんの一味違う所です。

ミルグラム実験(奇しくも叶の5ターン目と同じ電気です)で電圧を最大まで上げながら

「気持ちいいっていうんだ、叶、気持ちいいだろ?」

なんて言う被験者がいたでしょうか?そんな外道は恵ちゃんしかいねぇ。

 

どうやっても思い通りにならない、行動が理解できない恵ちゃんは研究者としての叶にとっては苛立ちの種であったのかもしれないけれど、同時に、どうしても達成したい課題みたいなものでもあったのかもしれません。

叶が最終的に合歓を施設から連れ出すという不合理な選択をするのは、恵ちゃんと同じ「愚かな」行動をとることによって恵ちゃんの思考を辿り、恵ちゃんを理解したかったのかもしれません。

(それって好きってことじゃん。)

 

 合歓

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 黒幕と見せかけて実はメインヒロインだった合歓ちゃん。

時期「眠り姫」として生まれ、ただただ現実に絶望するように仕向けられ、人間の醜い部分だけを見せられ続けてきた不幸の塊のような女の子。ただ、恵ちゃんと出会うことがなければ本当に決定的な絶望はあり得なかったんじゃないかと思わんでもないです。喪失による絶望は何よりも強烈だから。

(合歓ちゃんを絶望させることだけ考えるなら、叶が「賭け」のために恵ちゃんを生かしたのは失敗だよなぁ。そのころから叶は恵ちゃんに対して思う所があったのか。単に調子に乗って遊び過ぎただけか?あるいは、叶は親に捨てられた境遇から「失う」よりも「恵ちゃんに殺されるほど憎まれる」方がより合歓ちゃんを絶望させられると思ったのかも。)

で、恵ちゃんの命を救うために「恵ちゃんに殺されるほど憎まれる」方を選んだ合歓ちゃんは地下ゲームで恵ちゃんを煽ったり、学園を地獄にしたり、凛音様を便女にしたりします。なんか、そこまで実行できるあたり本当に恵ちゃん以外の現実には絶望してて、恵ちゃん以外はどうなってもいいんだなという感じです。

恵ちゃんに対してはこの上なく純粋でありながら、それ以外の現実に対してはどうしようもないくらいの悪意を抱き、それを実行する合歓ちゃんが素敵。

で、結局賭けには勝って、恵ちゃんと共に合歓ちゃんの楽園に繋がれることになってハッピーエンドでも良かったのだけど、恵ちゃん曰く

「俺たちは『楽園』に行く資格はない」

とのことで、あくまで現実の合歓ちゃんと幸福になることを選択し、合歓ちゃんの世界から出て行ってしまいます。

このセリフ、最初はいまいちピンと来なかったんだけど、恵ちゃんと合歓ちゃん両方とも生きているのだから、俺たちはまだ現実には絶望しきってはいない、みたいな意味かなぁ。(「俺は」ではなく「俺たちは」なところがいいですね。)

もしかしたら、合歓ちゃんの世界に繋がれた恵ちゃんが、見えている幸福な世界が現実ではないことに気付くことができたのも、合歓ちゃんが(無意識に)恵ちゃんと現実の世界に戻る「可能性」を残したのかもしれません。

 

最終的に(おそらく叶の手により)全ての記憶を失い大人幼女になった合歓ちゃんと再会したところで物語は終わります。何で記憶を失ったかについてはいろいろ考えられると思いますが、(合歓ちゃんが絶望し過ぎて施設から出たがらないから、とか、仮に組織に捕まったとしても「眠り姫」としての利用価値をなくすため、とか)結局物語は終わってもまだ2人は逃亡者の身であり、受難が終わったとは思えません。

選んだ道は決して楽ではないと思われますが、2人のその後は記憶の失った部分を幸福で満たして行ってくれたら素敵ですね。

 

 

どんなに現実が絶望的でも、何物にも支配されない不屈の精神さえあれば、意外と何度でもやり直しが効くのかもしれません。

 

ED 青葉りんご 「楽園の扉」


euphoria -楽園の扉-