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鉛甘味料うるたこんべ

変なもの愛されないものを主とした本、映画、工作、その他の記録

脳髄と宇宙の神秘 ボルヘス「伝奇集」

今回はボルヘス「伝奇集」です!「ボルヘスは作家のための作家ー」とかいろいろ噂だけは聞いてたやつを実際どんなものかと読んでみました。

 

伝奇集 (岩波文庫)

(表紙も素敵です)

 

あらすじ!

宇宙

あらすじ終わり!

 

 この本のあらすじらしいあらすじを書くということは私などには現状不可能なことでございまして、しいて言えば宇宙的な何かというところでございます。

たった10頁程度の短編にすら「無限」が詰め込まれているような濃密さで書かれており、私の容量の少ない脳みそではとてもとても処理が追いつかず、何度もフリーズしながらもなんとか読み進め、一応、通読することができました。

通読はしたものの現状自分はこの本の理解からはほど遠いところにいると思われます。

とはいえ、この本を100%理解できる人ってボルヘス本人くらいなんじゃないかって気もするので、まあいいです。

 

で、ここから下は分からないなりにわかったような気がしたり、思ったことを書いていくスペースとなります。

 

この「伝奇集」という短編集の中におさめられている多くは、「無限に繋がる物語」であります。あわせ鏡の中に光の速さで増殖していく自分を見るような、親殺しのパラドックスに陥るような、無限のような、それでもどこかに限りのあるはずと思えるような、あるいはどこかでループしていることに気付いてないだけなのか、脳髄の迷宮のヴァリエーションがページいっぱいに敷き詰められた迷宮総合カタログ。ただしカタログ自体も迷宮で、そのカタログもカタログに載ってる!みたいな感じです。

イデアの1つ1つは実はボルヘスじゃなくとも、「どこかの誰かが思った」ような内容ばかりだと思っていて、何らかの元ネタがあって書かれていると思うのだけれど、それをどれだけ集めたら「伝奇集」が出来上がるのか。その膨大なデータがどうやって処理したら282ページに収まるのかを考えるとこれは途方もない狂気の沙汰、人知の及ばぬ所に住む圧縮妖怪の仕業でございます。

圧縮された情報を理解できるかどうかっていう部分には、読者側の脳内に「解凍ソフト」が入っているかどうかによる気がして、おそらく元ネタとなっている思考に触れたことがある、あるいはそこを通ってきた人ならばスッと理解できるんじゃないかと思います。

1度通読してみて理解できん所が多かったけどまぁいいかと思えるのはそのためで、元ネタがあるならばこの先ちゃんと読書を続けていれば「伝奇集」をもっとしっかりと理解できるようになれるはずだと思えるから。

⇒まだまだ読まなければならない楽しい本が無限にあるということを実感できたから!(ここにも無限が!)こんなに嬉しいことはない!

 

 

科学の発達によって妖怪はいなくなりました。神は死にました。エベレストは80歳の老人にまで頂を踏まれ、この地上にはもう人類の到達できない土地はないかのように思われます。そんな現代!人類に最後に残された神秘は脳髄と宇宙くらいなのではないでしょうか。

思うに、「神秘」というものは人を動かす原動力になります。あまねく全てが十全で分からないことが何もない世界はおそらくあまりにもつまらない。実際そうはなりえないのだけれど、近頃の分かりっぷりにはそのように錯覚させてしまうような全能感があります。

「伝奇集」はそんな現代において今もなお我々に膨大過ぎる「神秘=希望」を提示してくれる素敵すぎる本でした。

(しかも、本人はただ思考実験で遊んでるだけっぽいところも好き)

 

BGM ピアソラ Fuga y misterio


Fuga y misterio