秋の夜長の皮工作 ミシマスラッシュ式ブックカバー
読書家諸氏、秋の夜長をどうお過ごしでしょうか。
いえ、愚問でしたね。読書家の皆さまは「読書の秋」という古き良きフレーズを免罪符として昼夜を問わぬ読書三昧、現実と虚構の間を縦横無尽に駆け回り仕事や学校に支障が出る日々を過ごされているものと推察します。
夜寝る前のひと時に、電車など公共交通機関による移動の最中に、仕事や授業の合間に、空いた時間に少しずつ進めることのできる読書という趣味を持ったことは我々にとってかけがえのない財産なのではないでしょうか。
それにしても人前で本を開くというのはなんともエロティックな行為であります。知識のある人が相手の愛読書3冊も知ることができたなら、その相手の趣味僥倖、価値観、性格、口に出すことも憚れるような願望までも、たちどころに知られてしまうことが容易に想像できるからです。普段秘されている体の部分を晒すのがエロであるならば、服を裂き、皮を剥ぎ、内臓を抉り、脳髄にナイフを突き立てて尚、見ることのできない、心の奥の熱い部分を晒す危険を孕んだ「公共の場での読書」という行為は如何にもエロティックであるように思います。
これを恥として隠してしまうこともできますが、それはどうにも陰険な気もしますし、かといってあけっぴろげにしておくのもお里が知られてしまうようで憚られる。これは随分と厄介な問題であるように思います。
ここでふと思ったのですが、衣服を全て取り払って隠すところなど何もない素っ裸の状態というのはエロではあるのでしょうが深味に欠けるところがあるのかもしれません。
見る側の立場としては、上からかぶせられた薄い衣の下にあるそれが、ふとした瞬間にチロリと覗いてしまうかもしれない状況にこそ心惹かれ、欲情し、ともすればその相手に夢中になってしまうのではないでしょうか。
大いなる世界暦氏の変遷の裏に数々の美女、悪女の存在があったことはよく知られた話でありますが、彼女らは心と身体の最も深いところを決して露わにしない、男を虜にする「秘密を覆う薄い衣」をもってしてこそ、歴史を動かし得たのかもしれません。
であるならば、「公共の場での読書」の際にはやはりブックカバーにより表紙を隠匿するべきであるものの、使用されるブックカバーは全てを覆い隠す厚い衣であってはならない、ということになります。それは如何なるものなのでしょうか。
今回はそんなブックカバー製作の話です。
はい。
そういうわけで前置きが長くなりましたがブックカバーを作ったよーって話です。
前回作った時は文庫サイズだったので今回は単行本サイズです。(新書サイズも作らなきゃ)
今回のコンセプトは二つ。
・表紙がちょっとだけ覗く。(金田一耕助シリーズの表紙が素敵に不気味なので)
・コンパクトで使いやすい。(前回のがえらいかさばる感じだったので)
必要な機構は一つ。
・いろいろな厚みの本に対応できること。
そんなこんなで作ったのがこちらになります。どうぞー。
表 ↓ 裏 ↓
全体 ↓
どうでしょう?
靴ひも方式でブックカバーの裂け目を広げたり狭めたりすることで紐の長さが足りる限りはあらゆる厚さの本に対応できるようになっています。
裂き方をどうするかがセンスの見せどころな方式だと思うんですが、今回は、「病院坂の首縊りの家」を入れることを想定して作ったのでこんな感じになりました。
表紙がこんな感じなので、ブックカバーの裂け目から「目」が覗くようにしました。
\いつも見てるよ/
赤い表紙の本を入れたらいい感じに”傷口”っぽくなるかと思って「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」を入れてみる。
うーん、あんまり傷口っぽくはならないかな。
裂け目の一番下のところで紐をまとめてるやつは、傷口から血が垂れてるイメージだったんですが、あんまりわかんないか。
因みに、余りの紐は栞に使うことができます。
次に「好き好き大好き超愛してる」を入れてみる。
これは個人的には「MOMO色トリック」を思い出す感じです。
ピンクは血の色ピンクは血の色♪
P-Model - Pinky Trick - YouTube
文字ははんだごてで書きました。遠目に見ても下手なのが分かります。
実は文字はない方が普通にスタイリッシュなのですが「普通にスタイリッシュ」なのはあんまり趣味じゃないし、文字を入れてみたかったので。
(しかしながら皮にはんだごてで文字を焼き付けるという行為は「隣の家の少女」を思い出させる実に心の痛む作業でした)
文字の内容は結構悩んだのですが、「SUICIDE MISHIMA SLASH!!」にしました。スーサイドミシマスラッシュ!!
勿論、割腹自殺をした三島由紀夫のことですよ。
ミシマ「MISHIMA」の「H」を忘れたのは愛嬌です。
「切断」と「文学」をキーワードに、語感が良くて不謹慎な言葉を。と思って考えたらこんな感じになりました。なんか「己の美学」のために死ねる人なんだなって気がしませんか?しませんか。
あ、因みに余り紐の先っちょに付いてるのはナイフ形のチャームですよ。
文字の配置は「裸のランチ」の表紙を参考にしたような気がします。
うん、これは全然うまくいってないですね。こんなん気付く人は取り返しのつかないレベルのヤク中で、家ではウィリアムテルごっこをやっているに違いないですよ。
裏はこんな感じです。雑!
えらいシンプルなんで作り方の説明もいらないくらいだと思うんですけど、作り方の手順はこんな感じです。
1、本のサイズより少し小さめに革を切る。
2、好きな位置で真っ二つにする。(スラッシュ!)
3、裂け目の両側に等間隔でハトメを打つ。
4、紐を通す。(紐の先っちょの処理はお好みで。)
5、余った皮で左右の袋を付ける。(縁に縫い目を付ける。)
6、お好みで文字などを入れる。
完成!
MS式(ミシマスラッシュ式)ブックカバーの総括として、
まず使い勝手はなかなかいいです。かさばらないし。結構しっかりと締め付けることができるから、読んでる時のブックカバーのたるみも少なく、ちゃんとフィットします。
取り付け、取り外しは、いちいち紐を緩めないといけないのでやや面倒ですが、頻繁に行う動作ではないので問題はないでしょう。
注意点としては、MS式はしっかり締め付けることができるが故に文庫本などには向かないかもしれません(試してはいませんが。)ちゃんとしたハードカバーでないとふとした瞬間に表紙を曲げてしまうような気がします。
あとは、ハトメが直接表紙に触れるので、表紙を傷つけてしまう恐れがありますね。
そんなところです!
このMS式ブックカバーはハードカバー相手に限定されてしまうものの、使い勝手も良く、簡単に作れて、(おそらく文字さえ入れなければ)どうやっても結構スタイリッシュなのができると思うのでなかなかにおすすめですよ!
秋の夜長には読書だけでなく、皮いじりなぞいかがでしょう?