鉛甘味料うるたこんべ

変なもの愛されないものを主とした本、映画、工作、その他の記録

フランスの歴史は乙女フィルタを通して読む血の通った世界 ブルボンの封印

本を読み終わりました。「ブルボンの封印」という本です。

 

ブルボンの封印

ブルボンの封印

 

 

この本、藤本ひとみさんという日本人の方が書いた本でありながら、「フランスの歴史もの」というカテゴリに分類される奇特な本でありまして、奇特な物好きとしては放ってはおけないものがありました。

日本の歴史にも明るくないくせにフランスの歴史に手を出すというのもいいではありませんか。要は真新しいものにたくさん出会いたいのです。

 

あらすじ!

産まれてから間もなくしてその存在を隠匿された少年ジェームズと、肩に刻印を持つ拾われ子マリエール。成長した二人はやがて自分の出生を解き明かす旅に出る。この2人の秘密がフランス王国の行く末を左右するということを知っているのは、イタリア人の政治家と、その関係者だけである。

あらすじ終わり!

 

フランスは遠いですね!読み始めの方はフランスの地名や人名が全然わからなくて難儀しましたが、話がノッテくると気にせずすいすい読めました。(完全に理解できてるわけではないという!)

とはいえ、私は過去に佐藤賢一さん(別の奇特なフランス歴史もの作家)の「双頭の鷲」という本も読んだことがあるので、その時よりはとっかかりがあった気がします。扱っている年代がいまいちかぶらないので領土の大きさとかが違ってくるみたいですが、たまーに「その土地はベルトラン・デュ・ゲクランが奪い返したもんやでー」みたいなのが、繋がる瞬間があって、楽しかったです。他にも、オリヴァ・クロムウェル(名前しか出てこない)という名前にピンときたので調べたら、クロムウェル巡航戦車の名前はこの人からとってる(やっぱり!)、とか、いろいろ繋がってくるところがあって、歴史ものはいろいろ継続して読むと点での理解が線になり面になる嬉しさを感じるカテゴリなのかもしれないと思いました。あれだ。作品の枠を飛び越えた「世界系」みたいな!

FF7FF10の世界は繋がってて、幻光虫とライフストリームは同じものなんやで、っていうのを知った時の嬉しさって言ったら近いかしら。

 

本の話をしましょう。

 

この本の凄いところってね、政治と色恋が同列で並べられて語られるところだと思ってね。そこが重要なんだ?!みたいな部分が沢山あって文化の違いを感じさせてくれます。「次の王が産まれた!傀儡政治をするために恋に溺れさせて腑抜けにするのだ!」とか「この恋がうまくいけば自信がついて政治の方もうまくいくに違いない!」とか。日本だったら天皇陛下のあれこれなんかはニュースにはなるけどあまり話題にはならない(と思う)から感じないのだけれど、今なら、イギリス王室とかを見て(凄い賑わいです)考えたら、向こうでは自分が思っているよりそういうのが大事なんかなーと少し納得します。(とはいえフランス王国がなんか弱そうに思えてしまうのも事実)

 

そういう面があるからかこの本は全体的に見てえらい耽美的と言いますか、「貴族様が優雅な日々を過ごされている!素晴らしいわ!」みたいな恋する乙女フィルタのようなものが働いていて、ムカつく人はムカつくんじゃないかと思います。自分は「そういうのもあるのか。」と、それはそれで楽しんだ人です。フランスを舞台にしたらそういう書き方が合っている気もしますし。(そういう意味では佐藤賢一さんのは全然フランスっぽくはないな)

調べたところによると、この本を原作にして宝塚で演じてたっていうのでそれはぴったりではないか!と大いに納得したのです。さすがよく見つけるわぁ。

 

物語が進んでくるとこの話は「鉄仮面」の謎を元にしていることが分かってきます(自分は分からない単語を調べてて、鉄仮面に行き着きました)。F91は関係ありません。

鉄仮面というのは、フランスのバスティーユ監獄(サドも入れられた所や!)に実在した仮面で顔を覆った囚人のことで、その正体を知るものは皆口を閉ざし、囚人の身でありながら非常に丁重に扱われていたのだという。

 

「鉄仮面はどっちなのか」という疑問が物語を引っ張り、入念に描写された登場人物それぞれの思惑がラストのフーケの館という一点で交わり、弾け、砕けたり混ざったりして結末を迎えます。

 

ストーリーも良く、キャラ一人一人に愛着が持てるし(己の欲する者のためにその他の全てを捨ててどこまでも行ける子、マノンがいいです)、歴史も(少し)分かるし、異文化だしでいい読書でございました。

 

歴史ってなんというか「統計」みたいな血の通わないものに感じてしまいがちなのだけれど、物語をつけて語ってもらうと本当にそういう時代を生きた人がいたんだと認識が変わってきます。(フィクションだからそりゃあ事実とは違うのだけれども、そうである部分もあったかもしれない)

それって楽しいですよ!