鉛甘味料うるたこんべ

変なもの愛されないものを主とした本、映画、工作、その他の記録

チラ見で輝く映画「散歩する惑星」でシュルレアリスムバーを開業

レンタル屋さんをうろついていた時に、視界の端に「○○する惑星」ってのが見えて、「点呼する惑星?!何故こんなところに?!」と思ってよく見たら「散歩する惑星」だった。「なんだよ…」と思いつつ一応手に取り、煽り文を読んでみると、存外面白そうだったので借りてきた。見た。

 

あらすじ!

よくわからないけどなんか悲しい出来事に見舞われた人たちが次々に悲しんでるっぽい。

あらすじ終わり!

 

なんだったんだろうなこの映画は。

決して面白かった訳でもないし、なんならちょっと寝落ちしたし、何らかの深いテーマがあるっぽいとかいうこともなく、考えさせられるとかでもなく、何だったんだろう。

それでいて見る価値のない完全な駄作というわけでは決してなくて、何らかの価値が確かにあったと思えるから不思議。

 

この映画ね。

構成?と言えるのかわからないけど構成が独特で、4コマ漫画の単行本みたいな感じなんです。こう、ちょっとしたエピソードが次々に切り替わっていく、みたいな。ただし2コマ漫画の時もあれば、4コマ漫画の3コマ目だけの時もある、っていう。厄介な構成で、「え、それで?」「え、なんで」「で?」「この人誰だっけ?」の連続から成っているんです、たぶん。

 

続きまして。

構図?でいいと思うんだけど構図がいちいち完璧で、常に絵のような光景のみで構成されているんです。っていうのもですね、ほとんど完璧に作りこまれたセットの中で、常に完璧な構図の位置からの定点カメラで撮られた映像が、4コマ漫画が切り替わる感じで次々に流れていくんです。で、メインになる(っぽい)話をしている人たちの後ろの方で関係ない人たちがよくわからない動きをしているのが気になったり、構図の「奥行き」がどうなっているのかどうにもわからずにどうにも気になったりしながら、気になってるうちに次のシーンに行ってしまうんです。

 

さらに。

エピソードは悲しみに暮れる人々の話(っぽい)ばかりなんだけど、どう考えてもギャグなんです。本人たちは必死のはずなのにどうあがいても滑稽というか、そんなことよりも後ろで起こっていることが気になるというか。ゴダール式なのかそうじゃないのか知らんけど話を追おうとしてもどうにもわからないし、それか構図が完璧すぎて現実味がないからかわいそうな人がどうでもよくなるのか。そのあたりのなんやかんやで「立派な絵画に変なセリフをつけて遊んでみた」ってくらいにしか見えなくなるんだ、たぶん。

 

奇しくも。

最近カメラが欲しいなーと思っていろいろ調べてて、その中で「カメラ初心者におすすめの基本の構図」みたいなのもチラッと見たのです。「散歩する惑星」の完璧な構図はそのかなり発展形ではあるのだけれど、やはり共通する部分があり、「ここは進〇ゼミでやったところだ!」と嬉しくなって、更にカメラが欲しくなったり。うん、この映画は構図の勉強にはマジでいい教材になりそうだ。

 

振り返ってみて。

媚び諂わないエピソードやギャグ、他に類を見ない構成や、独特で手の込んだ撮影方法、完璧な構図、などが思い起こされ、そうか、これは凄い映画だったんだと、今になって思えてきたという不思議!見てる間は全くそんなこと思わなかったのに!

 

たぶん。

この映画って、「この映画を見る」って見方が向いてない映画な気がする。だって映画に集中して見てると眠くなっちゃうんですよ。それよりも、「何気なくチラッと見たら画面の中で訳の分からないことが起こっている!しかも構図が完璧だ!」っていう見方ができたらきっと夢中になるんじゃないかと思ってん。

 

だから。

この映画は、コンセプトバーとかで延々と流れてたらいい働きするんじゃないかな。どんなコンセプトだって聞かれても答えに窮するけど。

シュ…シュルレアリスムバーとか…。